ドルトン東京学園中等部・高等部
芸術の旅CAC
本物に触れることを大切にするドルトンで、ヨーロッパに留学経験を持つ芸術科教員が企画・実施した芸術CAC。
フランス(ストラスブール)、オーストリア(ザルツブルグ)、ドイツ(ミュンヘン)の3か国を、7/24から8/1にかけて列車でめぐり、ヨーロッパの伝統文化を五感で体感しました。
7/24(水)
羽田発LH717便でフランクフルト経由、ストラスブールへ向かいます。
到着は深夜。ホテルで休み、翌日からの芸術の旅に備えます。
7/25(木)
【ヨーロッパの芸術を堪能する旅はストラスブールから始まります】
ドルトンの音楽と美術の先生が引率するCAC芸術の旅が始まりました。
到着翌日はストラスブール市内観光からスタートです。
ストラスブールは、1988年に旧市、2017年に新市街がユネスコ世界遺産に登録されました。また、EUの主要機関である欧州評議会の本部が置かれていることでも知られています。
午前は、1176年から260余年をかけて建設されたノートルダム大聖堂をじっくりと見学しました。その後、遊覧船で旧市街、16〜17世紀の街並みが保存されたプティット・フランス、欧州議会をまわりました。建物のスケールの大きさ、美しい街並みが印象的でした。
午後は、ガラス工房で有名なマイゼンタール・ガラス工芸センターにバスで出かけました。ここは、アール・ヌーヴォーの巨匠であるエミール・ガレが、1867年から1894年まで、ガラス製品の製造を行っていた場所です。18世紀初頭に始まったマイゼンタールのガラス産業は、ベルギーやドイツとの競争にさらされ、1969年に閉鎖されます。一時は廃墟となった工場跡ですが、現在ガラス工場跡には「マイゼンタール・ガラス工芸センター」という複合施設が建てられ、3つの文化施設が置かれています。現地ガイドによれば、フランス人は古いものをより良い形で作り替えることに長けているそうです。こうした歴史的背景に触れることも良い学びです。
7/26(金)
【ストラスブールで美術学校訪問】
魅力的な街の景観を散策しながらラン美術大学、トミー・アンゲラー美術館、現代美術館を巡りました。
ラン芸術大学(Haute école des arts du Rhin)(旧ストラスブール高等装飾美術学校)は、1892年創立の歴史ある美術学校で、本校美術科教員の母校でもあります。こうしたご縁があって、ガラス工芸科の主任教授に、オブジェ科(Option Objet)の6個の専攻(atlier)の施設を案内していただく機会を得ました。木工、宝飾、本、粘土、ガラス、金属のアトリエは、夏休み中で学生はいないのですが、彼らの熱気のようなものを感じました。見学後は、生徒達から入試の方法などや学生生活などについて質問がありましたが、とても丁寧に回答していただきました。
トミー・アンゲラーは、ストラスブール出身でニューヨークで活躍した作家、イラストレーターで、『すてきな3にんぐみ』などの絵本や、大人向けのイラストで知られる非常に多作なアーティストです。実は、ラン美術大学の卒業生でもあります。彼が故郷に寄贈した14,000点のスケッチが収蔵されています。この美術館を楽しみにしていた生徒は大満足な様子で、見学後、お気に入りのポスターを購入していました。
その後、市電に乗り、美しい街並みを眺めながら、ストラスブール近代現代美術館に移動しました。1998年に開館した同美術館では、1870年以降のロマン派を含む作品が展示されていますが、中でもストラスブール出身の画家ギュスターヴ・ドレの 幅6メートル・高さ9メートルの大作「法廷を去るイエス」はスケールの大きさに圧倒されました。また、ワシリー・カンディンスキーの音楽サロンなどの現代アートも我々の好奇心を駆り立てました。夕方のポン・クヴェール橋での集合写真には充実した笑顔が溢れています。
7/27(土)
【列車で3ヶ国を移動し、モーツァルト生誕の地ザルツブルクへ】
ストラスブールからオーストリアに列車で移動しました。
途中、シュトゥットガルト、ミュンヘンで2回の乗り換えがあり、約6時間半の大移動です。車内では、ストラスブールでの印象に残った出来事だけでなく、学校では日常生活、車窓から見える美しい自然で大いに盛り上がり、生徒らは一気に距離を縮めたようです。
到着後はザルツブルクの現地ガイドの方の説明を受けながら、旧市街を巡りました。世界遺産の旧市街は、バロック建築の荘厳な建物が残る、ストラスブールとはまた違った魅力のある街です。ミラベル庭園、ホーエンザルツブルク城、聖ペーター教会の墓地、メンヒスベルクの丘などを巡っていると、モーツァルトの時代にタイムスリップしたようでした。
7/28(日)
【ウィーンフィルで感極まる】
ザルツブルク2日目は、午前中にモーツァルトの生家とモーツァルトハウスの見学、ザルツブルク音楽祭でウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏会鑑賞をしました。
97歳のヘルベルト・ブロムシュテット指揮、世界最高峰のソリスト、美しい至極のサウンドをウィーンフィルの演奏でしっかりと堪能しました。世界中のセレブが集まる会場の豪華な雰囲気にも、圧倒されました。
終演後、あまりの感動に目を潤ませている生徒もいました。「ヨーロッパ最高」「来年も行きたい」とみんな大騒ぎでした。学年問わず、とても仲良くなって、旅も盛り上がってきました。
午後は、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台として、また多くの芸術家や著名人を魅了した湖水地帯として知られるザルツカンマーグートを観光しました。ザンクト・キルゲンでは、市庁舎が立つ広場に幼いモーツァルトがバイオリンを弾く像があり、モーツァルトの母アンナの生家もあり、歴史を感じました。ヴォルフガング湖はエメラルドグリーンで美しく、湖畔で食べるジェラートでほっこりしました。
モントゼーでは、「サウンド・オブ・ミュージック」で主人公マリアとトラップ大佐の結婚式シーンに出てくる聖ミヒャエル教会を見学しました。このミュージカルが大好きだという生徒は大興奮でした。美しい自然に癒され、夜はしっかりと睡眠を取り、翌日のハードスケジュールに備えます。
7/29(月)
【芸術を大事にしたバイエルン王国の文化に触れる】
ザルツブルクからミュンヘンに列車で移動し、ニンフェンブルク城、レジデンツ、聖母教会の見学をし、夜にはバイエルン国立歌劇場でオペラ鑑賞をしました。
バイエルン王国によって作られた街並みや建物は、まさに豪華絢爛。自由時間には、画材の購入に出かけたり、市場を散策したり、カフェで現地の雰囲気を味わったりと限られた時間を満喫しました。
ネオ・ゴシック様式のミュンヘン新市庁舎の巨大からくり時計は、1908年から休まず続いているそうで、観光客でごった返しているマリエン広場が静寂に包まれた素敵な10分間でした。
オペラ鑑賞前は、ミュンヘンで州立ホフブロイハウス醸造会社が直営するビアホールで夕食をとりました。文化体験として世界的に有名なビアホールの雰囲気を味わいました。乾杯はビールではなく、ドイツで人気のアプフェルショーレ(リンゴジュースと炭酸水のミックス)です。
お腹がいっぱいになったところで、プッチーニ作曲の「西部の娘」を鑑賞しました。事前学習でオペラの内容を予習してから鑑賞をしているため、物語もわかり、楽しく鑑賞ができました。声とオーケストラによって描かれるドラマと会場であるバイエルン国立歌劇場の建物の素晴らしさに感動しました。この劇場は、17世紀半ばに創設され、ルートヴィヒ2世の庇護のもと、飛躍的な発展を遂げた世界で最も素晴らしいオペラハウスの一つです。
7/30(火)
【最終日はドイツで】
ヨーロッパの芸術を堪能する旅はドイツで最終日を迎えました。
最終日は専用バスでロマンティック街道を走り、ヴィース巡礼教会、ノイシュヴァンシュタイン城を訪問しました。芸術の旅の締めくくりは、世界最大規模の美術館で世界最古の公共美術館の一つであるアルテピナコテークを訪問しました。
ヴィース巡礼教会は、1738年に信心深い農婦が、数ヶ月間熱心にキリスト像に祈りを捧げたところ、ある日突然、その像が涙を流した言われたことから、その後も巡礼者が増え、18世紀中頃に建てられました。教会の裏の、のどかな牧草地はあまりに魅力的で、時間を忘れて散歩していた数名の生徒が出発時刻に慌てて戻ってくるほどでした。
ノイシュヴァンシュタイン城は、メルヘン王、狂王の異名を持つ、バイエルン王のルートヴィヒ2世が自身が愛してやまないヴァーグナーのオペラの世界を再現するために1869年に着工された美しい城です。お城までは、馬車を横目に40分ほどのハイキングを楽しみました。マリエン橋からの眺めは一生忘れることができないほどでした。
アルテ・ピナコテークは、バイエルン王家ヴィッテルスバッハ家の収蔵品を市民を対象に展示する目的で作られ、その後国有化されました。ラファエロやデューラーなどの絵画が数多く展示されており、生徒らは目を輝かせていました。
夜は、ホテルでこの旅を振り返る会を行い、それぞれが1番印象に残った場所や事とその理由を発表しました。17人の生徒たちが、それぞれの視点でこの研修を振り返っていたことが印象的でした。また、仲間への温かい眼差しや拍手から生徒らがこの期間で親睦を深め、一つのクラスのように自然と友情を深めていったことを実感しました。
ヨーロッパの芸術文化は圧倒的で、忘れられない大きな感動体験となりました。
8/1(木)
ミュンヘン発LH1714便で、無事、羽田空港に帰ってきました。
お疲れ様でした!